力のコントロール

力のコントロール

歯科治療に従事して30年近く経ちますが、これまでいろんな症例を治療してきて自分なりにわかってきた事があります。

それは、これまで断片的にしか教えてもらったことしかなく、体系立てた説明も聞いた事がありませんでした。

それをここで体系立てて考えてみましょう。

まず、今からあげる症状がなぜ起こるか原因を考えてみましょう。

歯がしみる

知覚過敏です。なぜ知覚過敏が起こるか?

歯が欠けて、エナメル質が剥離し、象牙質が露出するとしみやすくなります。

なぜ歯が欠けるのか?硬いものを食べたから?

歯の硬さと食べ物の硬さを比べてみてください。どう考えても食べ物の方が先に割れます。

原因は、歯ぎしりや食いしばり、噛み癖といったものです。

マウスピースを使ってもらったり、日中に食いしばりをしないよう注意してもらったり、噛み癖直してバランスよく噛んでもらう事で知覚過敏が治る事がよくあります。

奥歯がグラグラする

歯ぐきに炎症が無いのに歯がグラグラしている事があります。

これも原因は、歯ぎしりや食いしばり、噛み癖といったものです。

同じように歯に負担をかけないようにすると、動揺がなくなりしっかりした感覚が戻ってきます。

歯の周りの骨がなくなる

歯に横向きの力がかかっていると、歯の周囲の骨がなくなってしまいます。

噛み合わせの調整や歯並びを治す事で骨の吸収がストップします。

顎がガクガクする、痛い、口が開かない

顎関節症です。

以前は噛み合わせに原因があると言われ、盛んに噛み合わせ治療が行われた時期もありましたが、随分前に噛み合わせとの因果関係は否定されています。

これも歯ぎしりや食いしばりを抑える事で、症状が改善します。

歯やセラミックが割れる

急に歯が割れたり、セラミックが割れたりする事があります。

特にセラミックが割れた時は、患者さんは歯医者の腕を疑いますが、よく考えてみてください。

セラミックを入れた直後ならまだしも、何年も問題なかったのに急にセラミックが割れますか?

多くは、歯が痛かったり、歯の治療中だったりして、そこを避けて片側ばかりで噛んでいたりすると、顎の軌道が変わり今までとは違った歯の当たり具合になってしまうため割れてしまうのです。

入れ歯が合わない

入れ歯は型を取って作るのですが、現在の型を取る材料は非常に精密にできています。

出来上がった模型の誤差は、本当に僅かでエラーが入り込む余地はほとんどありません。

多くは噛み合わせが合っていないからです。

つまり、噛み合わせが合っていないと、入れ歯に不都合な力が働き、入れ歯が動いてしまい、結果として粘膜に当たりが出て痛むのです。

歯周病が進行する

歯周病は、歯周病菌によって歯ぐきが炎症を起こす病気ですが、歯に強い力が加わると歯周病が進行する事が知られています。

力のコントロールは難しい

如何でしょう?

虫歯や歯周病は虫歯菌や歯周病菌が原因で、菌のコントロールをする事で改善します。

しかし、歯ぎしりや食いしばりといったものは、ストレスや悪習癖が原因で、歯科医師の努力だけでどうすることもできず、治す事が非常に難しい疾患と言えます。

日常生活で、食いしばりを気をつけたり、お休みの際にマウスピースをつけ不要な力を極力加えないようにしたり、虫歯や歯周病などで痛い歯があればすぐに治すとか、バランスよく咬めるような噛み合わせにするといったことをできる限り行って力のコントロールをする事が大切です。