歯を失った時の治療法の考え方

インプラントかブリッジか入れ歯か?

是非、最後までお読み下さい。

私はこの仕事を始めて30年近く経ちますが、これまで数多くの患者さんの様々な症例を時系列で見てきました。その経験をもとに、ある程度患者さんの口の中がどのように変化していくのかを予想することができるようになりました。その上で、当院の患者さんには今後どのようなことが起こるかをアドバイスしています。ここでは、多くの患者さんの長期的な経過を見た上で何が一番いいのか、私の私見を述べさせて頂きます。どうか最後までお付き合い下さい。

皆さんの多くはインプラント入れたいと考えている

最初に申し上げましょう、

「インプラントがベストです。」

「そんなに簡単に言い切るの?」と思われるかもしれませんが、これは多くの患者さんのご意見を総合した結果です。ですから私も皆さんには「インプラントができる条件が整っているのであればインプラントがベストです。」と言います。

皆さんも薄々勘付いているかと思いますが、インプラントが良いものでやってみたいという気持ちがあるから悩んでいるのです。「入れ歯を入れたいけどどうしよう?」と悩んでいる人はいらっしゃいません。

ですから、当院へいらっしゃる患者さんの多くは、「インプラントは良いですよ」と言ってもらえるのを待っていらっしゃいます。いろんなところで怖い話を聞くので、専門家に背中を押してもらいたいだけの方が多いのです。

ただ、費用も高額だし、外科処置を伴うためハードルが高いのです。

ここでインプラントの大きなメリットをご説明します。

インプラントは歯と同じように噛むことができます。

周りの歯にダメージを与えません。

入れ歯やブリッジに比べ明らかに自分の歯と同じようなものと言えます。

もちろん、歯牙移植という選択肢の方が自分の歯と同じ機能を回復できますが、非常に条件が限られてしまうため、多くはインプラントがもっとも天然歯に近い機能を回復する治療法だと考えられます。

自分の歯と同じような機能をできるのであればそれが一番良いことくらいは皆さん分かっていらっしゃいます。ですから、皆さん本当はインプラントにしてみたいと思われてい方が多いのです。

長期安定に最も大切なこと

インプラントのデメリットはここでは置いておいて、皆さんが意外と気づいていない大切なことを申し上げます。

入れ歯、ブリッジ、インプラントの中で、力のバランスをもとに戻せるのはインプラントだけです。

力のバランスとは、1本1本の歯にかかる力を均等にして、歯に過剰な負荷がかかることを防ぐことを言います。

例えば奥の歯が1本抜けたとします。すると前後の歯に今まで以上の力が加わって、下手をすると歯が割れてしまうのです。

昨今、当院で歯を抜くケースは、ほとんど歯が割れてしまったことが原因です。虫歯や歯周病で歯を抜くより圧倒的に多くなっています。

ここでブリッジについて考えてみましょう。ブリッジは既存の歯を土台として橋をかけるようにして、歯の無くなったところにダミーを入れて噛ませるものです。歯をたくさん削るなどのデメリットがありますが、最も問題なのが今までよりも多くの力を土台となった歯が負担しなければならないことです。それによりブリッジを固定している接着剤が早く劣化して、そこから虫歯になったり、土台となった歯が割れて抜かなければならなくなることが、皆さんが想像する以上に頻繁に起こっています。言い方を変えてば、ブリッジは土台となっている歯を犠牲にし、歯の寿命を縮める治療法だと言えます。

ブリッジは壊れやすく歯も割れやすい

ストレスの多い方は歯ぎしりや食いしばりも強くブリッジが壊れやすと言えます。最悪、歯がドミノ倒しのように崩壊していくことは稀ではありません。

入れ歯は異物感が大きく噛みにく

では入れ歯はどうか?

入れ歯もブリッジと同じように既存の歯にバネをかけて入れ歯を安定させています。粘膜の上に乗っていますから、ブリッジに比べて多数歯欠損には向いています。しかし、欠損歯数が多いほどバネをかけている歯には大きな負担がかかります。

そして入れ歯は柔らかい粘膜の上に乗っかっているため、噛むと沈みます。噛み心地は自分の歯とは比べ物になりません。

私はもともと大学を卒業後に入れ歯を専門として勉強しました。

その入れ歯の専門家がなぜインプラントを勧めるのか?

専門家がいくら頑張って良い入れ歯を作っても、インプラントを入れた時の満足感には到底かなわないことは、嫌という程感じてきました。ですから私はインプラントを学び、治療の選択肢を増やしたのです。

改めてここで他の歯に余計な負担をかけないようにすることが長期安定に最も大切だということを強く申し上げたいと思います。

歯科治療において力のコントロールが最も重要で難しいことなのです。

割り切って考えられるか

インプラントはあくまで人工物であり、半永久的なものではありません。ですから、私は「インプラントは何年保ちます。」といった類のコメントは一切しません。これまで世界中で報告されたインプラントの成功率は非常に高いものであることを患者さんにお話ししつつも、「いつダメになってもおかしくないものだ」ともお話ししています。

ここで、「インプラントはやはりダメか」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、よく考えてみてください。

例えば、5年でインプラントがダメになったとしましょう。ここで「インプラントがたった5年でダメになってしまったのか。やらなきゃよかった。」と考えるのか「思ったよりも短い期間でダメになってしまったが、少なくともこの5年間は、他の歯へかかる負担を減らし、破折などのトラブルを防ぎ他の歯の寿命を延ばしてくれた。」と考えるのかによって全くインプラントに対する考え方が変わってきます。

皆さんは、インプラントが半永久的であるような過剰な期待を寄せるあまり、インプラントに踏み出せない方が多いのです。

これがペースメーカーだったらどうでしょう。ペースメーカーは半永久的なものではなく、定期的に手術をして電池交換しなければなりません。何度も手術をするのなら入れたくないとペースメーカーを入れるのを拒みますか?寿命を伸ばせるのであれば仕方がないと思えるから入れるのですよね。

インプラントもペースメーカーのように完全なものではありません。しかし、入れることによって残存歯の負担を減らし、寿命を延ばすことができます。

極端な話、定期的にインプラントを入れ替えてもそれくらいの価値があると割り切った考えができるかどうかが、インプラントを選択する上でポイントとなってくるのではないかと思います。

ちなみにインプラントの成功率は10年後の予後で90%の後半の成功率を誇っています。ブリッジは50%から70%だと言われています。

上に述べたことを踏まえた上で、インプラントのデメリットと比較していただければ、きっと後悔のない選択ができるとおもいます。

前歯はブリッジもあり

ただし、これまで述べてきたことは奥歯にはよく当てはまるのですが、前歯は「審美性の回復」というとても難しい問題が絡んできます。

前歯のような審美領域では、力のコントロールと審美性のバランスを考えながら治療法を考えなければなりません。ブリッジの方が比較的確実に審美性を回復できるケースが多いため、有効な選択肢の一つと考えています。