新型コロナウイルスは歯科治療で感染するのか

新型コロナウイルスと歯科治療

東京都では一部地域で新型コロナウイルスの感染が確認されるものの、全国的に見ればかなり落ち着いてきたと言えます。

新型コロナが蔓延し始めた当初は風邪程度の軽いものだという認識が医療機関にもありましたが、その実態が明るみに出てくるにつれよく分からない非常に恐ろしい病気だという認識に変わっていきました。

中でもニューヨークタイムズが、新型コロナにもっとも感染しやすい職種として歯科医療と指摘した際には、私たち歯科医療従事者に戦慄が走りました。

4月初めには厚生労働省からも緊急性のない歯科治療は先延ばしするように通達が出たため、当院も感染拡大を防ぐべく、1ヶ月ほど緊急性の高い患者さんのみ治療を行い、他は緊急事態宣言が解除されるまで延期するという措置をとりました。

それから2ヶ月、少しずつ新型コロナウイルスの意外な実態が見えてきました。

まず、欧米に比べアジアでの罹患率が極端に低いこと。原因は色々と言われていますがまだはっきりとしたことは解明されていません。しかしながら、これは日本にとっては非常にラッキーなことでした。

次に大阪府の検証において、感染が減少傾向に転じたのは政府の緊急事態宣言以前の3月末からであり、自粛要請が感染拡大を防いだわけではなく、おそらく国民一人一人がマスク着用や手洗いなどを実践したことがその要因ではないかと報告しています。

そしてもっとも意外なことは、歯科医療現場においてこれまで国内で患者さんへの感染の報告がなかったということです(注1)。ソフトバンクグループが行った抗体検査も歯科医師(0.7%)歯科助手(0.9%)と予想に反して非常に低いものであったと報告しています(注2)。

これらの意外な事実から言えることは、歯科治療は当初想定していたほどリスクの高いものではないということです。それは、国内において歯科医療現場で患者さんに感染させたという報告がないということから明らかです。

おそらくマスクと手袋をする事でかなり感染予防ができているという仮説を立ててもいいのではないでしょうか。(ちなみにソーシャルディスタンシングはマスクを着用しない場合の話であって、マスクをすれば感染することはないと考えています。)

とは言え、まだまだ未知の感染症です。歯科医療の携わるものとして、決して感染者を出すことのないよう引き続き感染対策に力を入れていきたいと思います。

注1)

「併せまして、感染リスクが高いといわれております歯科医療につきましても、愛知県の歯科医療現場から1人も感染者を出していないということもありますし、全国でも現時点まで歯科医療については患者さんへの感染の報告が認められていないということもございます。これは従来から、歯科医療現場では常日頃から唾液や血液の飛沫から起こる肝炎、エイズなどの感染症から身を守り、患者さんへの感染を守るために、マスク、グローブ等の着用といった徹底した感染症対策に取り組んでいただいているおかげであるというところで、感謝を申し上げたいというふうに思っております。」出典 愛知県の大村秀章知事の6月15日の定例記者会見より

注2)

「ソフトバンクグループは6月9日、同グループ社員や医療従事者など約4万4000人を対象に実施した、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査の結果を発表した(外部リンク:動画、発表資料)。全体の抗体陽性率は0.43%で、このうち医療従事者約5800人については、抗体陽性率は1.79%だった。

 ソフトバンクグループは5月12日~6月8日にかけて、同グループや取引先関連の計465社の社員3万8216人と、全国の医療機関539施設の医療従事者5850人に対して、簡易検査キットによる抗体定性検査を実施した。ソフトバンク・取引先ではOrient Gene社、医療機関ではINNOVITA社の簡易検査キットを使用した。

 計4万4066人を対象とした検査の結果、全体の0.43%に当たる191人が抗体検査陽性と判定された。このうち105人が医療従事者で、今回検査した4万4000人の中の医療従事者5850人のうち、1.79%だった。ソフトバンク・取引先の3万8216人については、陽性者は86人(0.23%)だった。

 医療従事者の中で最も陽性率が高かった職種は、受付・事務など(陽性率2.0%)。次いで医師(1.9%)、看護師など(1.7%)と続き、歯科助手(0.9%)および歯科医師(0.7%)は比較的陽性率が低かった。会見で登壇した国立国際医療研究センター理事長特任補佐の大曲貴夫氏は「高リスクと思われる歯科関係者の陽性率が低かったのには驚かされた。歯科での感染対策や、診療した患者の特徴などを深掘りする必要がある」と指摘した。

 ソフトバンク・取引先の中での陽性率は、店頭スタッフが0.04%、社内業務や営業、技術などのオフィス社員(早期に在宅勤務に移行)が0.17%、コールセンターでは0.41%だった。ただし、コールセンターの感染者29人のうち24人が、約600人が所属する一カ所のコールセンターにおける陽性者であったという。大曲氏は「クラスターから多くの人に感染が広がるという、新型コロナウイルスの感染の類型が見えている。店頭スタッフのように人と接触する職場は一見リスクが高そうに思えるが、陽性率を見る限り、マスクなどの感染対策や職場環境次第でリスクを下げられるようだ」と分析している。」出典 日経メディカル