インプラントの説明をすると、患者さんから次のような話がよく返ってきます。
「知り合いがインプラントを入れたけれど、体に合わなかったらしくてうまくいかなかった。」
「インプラントで大変な思いをした知り合いがいるから、インプラントは入れたくない。」
皆さんはグッドマンの法則ってご存知ですか?
「不満を抱いた非好意的なクチコミは、良いクチコミの2倍から3倍多く拡がる。」
これは、アメリカのグッドマンという人が苦情処理調査をして導き出した法則で、営業をしている方ならご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
この法則に当てはめてみると、インプラントがうまくいかなかった人のほうが、うまくいった方に比べて口コミを広げやすいといえます。
そもそも、インプラントがうまくいっている人が、「インプラントを入れてすごくよかった」と自慢することはありません。なぜなら、「上手くいって当たり前」だからです。これが、前歯が白くきれいになったということならティータイムの話題にはなるかもしれません。人は「自慢話」や「苦労話」はしたがりますが、面白くもない「当たり前の話」をすることはありません。例えば「ブリッジを入れて良かった。」なんて話は聞いたことないですよね。
さらに、知り合いの体験談は身近に感じるため特に影響力が大きいことも留意しておかなければなりません。インターネットで調べた体験談よりも、身近な人から「インプラントで苦労した」という話の方が重く受け止めるのは明らかですね。
では、インプラントの実際の満足度はどれくらいなのでしょうか?日本口腔インプラント学会のホームページによると、非常に満足しているが79.6%、やや満足しているが18.0%、あまり満足していない0.6%、まったく満足していない0.3%となっています。(調査方法はそのページの最後の方に記載されています。)
インプラントの実際の成功率はこれより少し低く、5年後の成功率が90〜95%となっていますので、私が想像した以上にインプラントを入れた患者さんの満足度は高いようです。
私はここでインプラントについてその素晴らしさを語るつもりはありません。私がみなさんに伝えたいのは、「偏った情報で判断しないで!」ということなのです。
私たちは医療のプロです。毎日たくさんの症例と向き合い、どのような治療をするのがベストなのかを常に考えています。それに比べて、みなさんの情報がどれくらい信頼できるものなのか容易に想像できると思います。ほんの一握りの情報で判断してしまうことはとても危険なことだと思います。
ただ、ここで私もプロの情報を鵜呑みにしろと言うつもりもありません。プロの中にも邪(よこしま)な考えを持っているものもいますから、全てが正しいとは言えません。そのため歯科医院などホームページではどうしても考え方が偏っていることがありますので、学会などの団体がまとめたホームページをご覧いただくことをお勧めします。
歯科全般については日本歯科医師会が一般向けに情報を公開しています。インプラントなら日本口腔インプラント学会やICOIインプラント学会などが参考になると思います。