症例集

歯周病の再生治療(エムドゲインとリグロス)

歯周病にかかって、歯の周りの骨が痩せてしまうと、基本的には元に戻る事はありません。しかし、条件が良ければ再生治療を行う事で骨をある程度回復させることができます。当院でも、以前より再生療法を行なっていました。

GTR法

その歴史は、今から30年近く前にはGTR法といって、欠損した部分に特殊な膜を入れて、その下に骨を作ろうというものでした。当時「一旦失われた歯を支える骨は回復しない」という常識を覆す画期的な治療法として注目を集めました。ただ、膜を入れる時の外科処置の難易度が高く、失敗した時のダメージも大きかったため一部の限られた歯科医師だけが行なっていました。GTR法が普及し始めた頃はちょうど歯科医師として駆け出しの頃でしたので、技術的な難しさを痛感しながら、難易度の低い症例を選んで行なっていました。当然上手くいった症例もありますが、思うようにいかなかった症例もあります。

エムドゲイン

そして、私が GTR法と格闘している頃、エムドゲインという画期的な薬が開発されました。これは、GTR法に比べ外科処置の難易度が低く、大きな失敗の少ない治療法だったため、一気に普及しました。臨床成績もGTR法と比べて遜色ないことがわかると、私の臨床はエムドゲインを使ったものに置き換わり、症例も格段に増えました。ただ、薬と言っても化学合成の薬ではなく、ブタの歯から取り出したタンパク質を原料とするものだったため、当時話題になった狂牛病が患者さんの抵抗感を増幅させてしまい、我々も使いづらい材料でした。

リグロス

そして、近年リグロスという新しい薬が開発され、エムドゲインに取って代わろうとしています。リグロスは、元々「床擦れ」の薬としてこれまで長い間使われていたものだったのですが、歯周組織の再生に効果があることがわかり歯周病治療用として改良されました。これも、臨床成績はエムドゲインと遜色なく良好であり、化学合成薬品であることから患者さんにも受け入れてもらいやすいのが大きな利点です。

エムドゲインの症例

矢印のところまで骨が溶けていいます

エムドゲインを入れて1年後、骨が回復しています

この症例は2012年にエムドゲインを使って骨を回復させたものです。素人目では劇的な回復には見えないかもしれませんが、私たち歯科医師からすると、驚くべき回復なのです。正直、私はこれで一安心していました。

リグロスの症例

6年後、回復した骨が再び無くなってしまいました

リグロスを入れて半年後、骨が回復しています

ところが、エムドゲインで骨が回復して安心していたのも束の間、6年もすると再び骨が無くなってしまいました。このように、再生療法を行なって骨が回復したものが、しばらくするとまた骨が無くなってしまうという症例には何度も出くわしています。歯周病を引き起こす原因は、磨き残しだけではなく、噛み合わせも影響しているため、被せ物もやりかえて、過剰な負荷がかからないようにしました。まだ、2年しか経過していないためなんとも言えませんが、リグロスの効果は確実に認められます。

再生治療というと、みなさんは元のように戻ると考えがちですが、全く元のように戻ることはなく、回復というより改善と考えてもらったほうがいいと思います。さらに、再生療法を適応できる症例は、限られていることもお忘れにならないようにしてください。

平野 恭吉平野 恭吉

平野 恭吉

ヒラノデンタルオフィス 世田谷区用賀4−12−4

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