オミクロン株による第6波がやってきました。今回の変異株は、これまでの報告から感染力が非常に強く、急速に拡大する反面、これまでの株に比べて軽症であり、収束期間もこれまでの3分の1であることが報告されています。とは言え、これらのデータの多くは欧米のものなので油断はできません。
「ファクターX」らしきものが見つかった
ところで昨年末、日本人のファクターXと思われるものが見つかったとのニュースが流れました。それは日本人にコロナウイルにコロナウイルスへの交差免疫があるというものです。つまり、アジアでは過去に力の弱いコロナの流行があったので、多くの日本人がその免疫を持っているからだとうことのようです。
ここからは大胆な私の見解ではありますが、本当にオミクロン株によるダメージが小さいものであれば、感染が広がることによって、多くの人が免疫力を持ち、収束していくことが考えられます。それは天然のワクチンみたいなものだからです。ワクチンよりも軽い症状ならかかってもいいかもしれません。(あくまで私の思い付きなので誤解のないようお願いします。)
さて、みなさんはご存知ないかと思いますが、歯科医院にもファクターXがあります(私だけが唱えているだけかもしれませんが)。わかりやすく説明するために、新型コロナウイルスが蔓延し始めてから今日に至るまで私たち歯科医療サイドがどの様に考えどの様な行動を取ってきたかを振り返ってみたいと思います。
歯科治療は危険?
まず、コロナウイルスが広まり始めた頃。私たち歯科業界に衝撃を与えたのが、ニューヨークタイムズ(The Workers Who Face the Greatest Coronavirus Risk – The New York Times)で感染リスクの高い職種に「歯科医師」「歯科衛生士」が名を連ねたことです。
確かに、飛沫感染すると言われているのに私たちの仕事は口の中にエアーや水を吹きかけて歯を削ったり汚れを落としたりしています。まさに「飛んで火に入る夏の虫」の様な状態であることは誰しも想像がつきます。
歯科医院でのクラスターは今まで1件のみ
そんな中日本では全く先の見えない未知の感染症に怯えつつも、生計を立てていくため多くの医院が恐る恐る診療を続けていましたが、病院や老人ホームなどのでクラスターが発生していたにもかかわらず、不思議なことに歯科でクラスターが発生したというニュースは作年の4月に富山であった1軒のみでした。
歯科医院は全国で68,000軒ほどあります。全国ではこれまで170万人以上がコロナに感染していますが、歯科医院でコロナにかかったのは1軒しか報告されていません。数字だけを見てみると、歯科医療での感染のリスクは非常に少ないと結論づけられます。
この事実から導き出せるのは、「歯科医院の新型コロナ感染対策が徹底されていた。」か「歯科治療は感染しやすい行為ではない。」のどちらか、あるいは両方の要因があるということです。ただ私の感覚では、どちらも納得のいく要因ではありません。
これまで30年近くこの業界にいますので、いろんな歯科医院があることは知っています。コロナ以前はグローブを着けずに診療している歯科医院もありましたし、器具の滅菌が徹底しているとは思えない歯科医院も沢山ありました。そんな状況下で68,000軒もの歯科医院のうち1軒しか感染が報告されなかったということは、私には信じられないことなのです。
歯科治療では新型コロナウイルスと同様、唾液を介してウイルス性肝炎にかかるリスクがあります。最近はずいぶん少なくなりましたが、過去にはウイルス性の急性肝炎に罹患し、救急車で運ばれたという知り合いの先生も複数います。ウイルス性肝炎に比べ新型コロナウイルスの方が感染力が高そうなので、新型コロナが蔓延し始めた当初は、悪夢のような光景が頭をよぎっていました。ところが予想に反して、1年半近く歯科医院からのクラスター発生はゼロという事実に訳がわからないというのが正直な感想です。
美容院や病院ではクラスターが発生している
似たような業務形態をとっているのが理美容院です。こちらはいくつかクラスターが報告されています。どう考えても美容院と歯科医院とでは、歯科治療の方が感染し易いに決まっています。でも結果は、歯科医院のほうが感染が広がっていません。
また歯科医院より感染対策がしっかりしていると思われる病院でクラスターが多く発生しているのも私にはよく理解できません。病院は患者さんが集まるところなのでクラスターが発生しやすいというのは良くわかりますが、飛沫を浴びるリスクとしては、歯科医院の方が遥かにリスクが高いのではないかと容易に想像できます。
何が有効なのか?
クラスターの発生した病院や美容院とクラスターどころかわずか1件しか感染していない歯科医院との違いはどこか、よく考えてみると一つだけ感染を防いでいると思われることがあります。それは
「マスクとグローブの合わせ技」
ではないかと思います。美容院も病院もマスクをしていますが、美容院はグローブをすることはほとんどないと思いますし、病院もすべての患者さんにグローブをしているわけではありません。歯科医院だけがグローブとマスクの併用をしているのです。
コロナの感染経路は、飛沫と接触です。飛沫はマスクで、接触はグローブで防ぐことができます。また、歯科医院はゴーグルで飛沫感染を防ぐ習慣がコロナ以前からあります。そうした事が感染を防いだのではないかと思います。
また、歯科医院では、意外と患者さんがしゃべる機会が少ないのも一つの要因ではないかと思います。治療中はおしゃべりできませんからね。病院では受付で一番感染が多いようです。美容院も黙って髪を切っているところは少ないんじゃないでしょうか。
そう考えるとマスク会食も、非常に効果のあるものではなかと思えてきます。
とは言っても、これはあくまで私の個人的意見に過ぎません。これからも歯科医院の「ファクターX」を探していきます。