今日は、少々マニアックな話ですが、歯医者が渾身の力を振り絞っている作業ですから、皆さん是非読んでみてください。0.1mmの世界の仕事をしています。
きれいな被せものを作るためには、正確に型を取って、正確な模型を作る必要があります。正確な型を取るのは歯医者の最も大切な仕事の一つです。
歯の型を取られた経験をお持ちの方は多いと思います。しかし、実際どのように型を取っているかご存知の方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか?患者さんにしてみれば何をやっているのだろうと疑問に思われる方も時々いらっしゃいます。
保険治療の型は、たいてい寒天とアルジネートと呼ばれる冷たい粘度みたいなもので型を取るのですが、自由診療ではもっと正確な型を取るために、より精度の高い材料であるシリコンを使って、細部にわたり細心の注意を払い型を取ります。
まず、被せるセラミックと歯との境目が見えないように、歯茎の下に境目がくるように歯を削ります。そして、歯と歯茎の境目(ポケット)を広げて型を取りやすくするために、絹糸を歯と歯茎の境目に慎重に入れていきます。
次に、もう1本少し太めの糸を入れて、さらに歯と歯茎の隙間を広げます。そうして、型を取る直前に、この白い糸を取り除き、出来た隙間に型の材料を流し込むのです。
あとは、歯の色見本を入れた写真を撮って、技工士さんに製作を依頼します。
仮歯を外して、糸を入れて、型を取って、また仮歯を入れてとやっていると40分くらいかかってしまいます。
私の場合、最も集中する仕事の一つですので、この時ばかりは無言で黙々と作業します。患者さんにもそれが伝わるのか、普段治療中にお話をする方も、ずっと黙って治療を受けて頂いています。こだわりの作業ゆえに、患者さんにもこの機会に是非歯科治療の内容をご理解頂ければ幸いです。