先日のニュースで俳優の山田辰夫氏が亡くなったことを知りました。正直言えば、顔写真を見るまでは誰だかわからなかったのですが、よく脇役で出てくる俳優で、最近見た「おくりびと」でいいところを演じてるのが印象に残っています。
その遺作となったのが、今秋公開される映画「沈まぬ太陽」だということを合わせ知り、さらに驚きました。「沈まぬ太陽」は僕が山崎豊子作品を読むきっかけとなった作品でした。
先輩から勧められ読み始めたのが単行本が発売された年の年末で、「最後まで読まずに年は越せない」と思い無我夢中で読んだ記憶があります。内容は、腐敗していく航空会社に立ち向かっていく男を描いています。それも単なる小説ではなく、実在の人物をモデルにして、かつての日本航空の実情をリアルに描いた社会派小説です(あくまで架空の話としていますが)。
そこでは、経営者たちの腐敗により、安全運行がおざなりにされ、遂には飛行機が墜落してしまった様子が描かれています。そう、御巣鷹山に墜落した日航ジャンボの話です。全5巻中の第三巻だったと思いますが、仕事帰りの電車の中で読みながら、涙が止まらなかったことを覚えています。(事故当時は、僕は大学受験の浪人生で、1日中テレビにかじりついて悲惨な事故の経緯を見守っていました。)
そんな痛烈な批判を込めて描かれた小説ですから、まさか映画化されるとは思ってもいませんでした。よく、日航が政治家に手を回して圧力をかけなかったものだと思います。(ちなみのこれを読んでからJALには乗っていません。ごめんなさい。)この秋絶対見逃せない映画ですね。
山崎豊子作品には、「白い巨塔」「不毛地帯」「大地の子」「二つの祖国」「華麗なる一族」などがありますが、どれもすばらしい作品だと思います。ご存知「白い巨塔」は、40年以上前の作品ですが、大学の実情を知る僕には、40年前に今と全く変わらないようなことが繰り広げられていたことを知り、医学の進歩に比べ人間は全く進歩していないことを痛感させられた作品でした(大学の教授選は恐ろしいです)。
「不毛地帯」は2年前に亡くなった瀬島龍三氏をモデルとしており、シベリア抑留から商社(伊藤忠がモデル)時代の石油発掘の話が描かれています。私の亡くなった祖父(明治生まれ)も関東軍に所属しシベリア抑留を経験していて、その話を子供の頃聞いていたために、私にはとても小説として読むことができなかった作品です。
「大地の子」はNHKのドラマがとてもよくできているため、原作とともにそちらをビデオで見られることをオススメします。この作品を読むまでは、中国残留孤児とか、文化大革命とかいったことはよく知らず、関心もなかったのですが、これを読んで痛い程わかりました。
最初にパンダ(ランランとカンカン?)がやってきたときに、私は田舎から初めて新幹線に乗って上野動物園へ連れて来てもらいました。その少し前までは、日本は中国と国交がなかったため中国の様子は知る由もなかったのですが、まさか革命の名の下にこれほどまでの弾圧が行われていたとは思いもしませんでした。
「二つの祖国」は、第二次世界大戦前後の日系アメリカ人の様子が描かれています。ところが私の患者さんの中にロサンジェルスの収容所にいた経験を持つ方がいらして、私にとってはこれも小説というより体験談を聞いているような感覚でした。
「華麗なる一族」は最近テレビドラマで木村拓哉が主演で放送されていましたから見られていた方も多いと思います。
どれも、長編で重い内容ですが、絶対おすすめの小説です。
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