大河ドラマ「天地人」に続き、スペシャルドラマ「坂の上の雲」がNHKで放送されています。
私は、10年くらい前にこの作品を読んだのですが、明治という時代の息吹がとてもうらやましく思えた記憶があります。それ以来、またもう一度読んでみたいと思っている作品の一つで、映像という形で再び振り返ることができ、とても楽しんで観ています。
先日このドラマの監修者の一人である関川夏央さんの書いた「坂の上の雲と日本人」を読みましたが、「坂の上の雲」の解説書みたいなもので、とても楽しく読ませてもらいました。
歯医者という仕事は、いろんな年代の方と接することができます。最近はずいぶん少なくなりましたが、私が大学を卒業して高齢者歯科に入局した頃は、まだ明治生まれの方が大勢いらっしゃいました。
大勢の患者さんと接しているうちに、明治の方に特有の雰囲気というのがあるなという実感を持ちました。つたない私の表現力ではとても言い表すことなどできませんが、どこかこう「からっとした」、まるで瓦屋根の上に寝そべって五月の空を眺めているような爽快で潔いといった雰囲気を感じていました。
それは治療の進み具合にもでていました。
「こうこうこういった治療がいいと思います。」と言えば、「はい、先生にお任せします。」と言われ、「いや、お任せしますでは困りますよ。」と言えば、「私などには解らぬことですし、この道で勉強されご立派になられた先生のおっしゃることを否とはいえません。」と押し返され、「ならばそのようにさせて頂きます。」と治療を進めるも、何せ卒業したばかりの出来損ないに総入れ歯などという難しい治療が満足にできる訳でもなく、うまく行かない心苦しさに詫びをいれると、「なんの先生腕じゃなく、私の口が出来損ないなのでうまく行かないのですよ。」といって慰めてくれる。
そういったやり取りが何度あったことか。私に何の疑いもなく身を預けてられる患者さんに対して、私は明治人特有の潔さを感じ、信頼されている責任の重さ感じながらも、とても気持ちよく治療ができました。
今は、ずいぶんこうした関係は少なくなり、寂しさも感じます。「坂の上の雲」を見ていると、そんな明治生まれの人たちにまだ出会えたようで、なぜか懐かしいような、嬉しいような気持ちになります。
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