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法事 

ようやく秋になったと思ったらまた夏のような暑さですね。でも、予報では今度こそ夏は今日までのようで、明日から涼しくなるようです。

暑さ寒さも彼岸までとは、本当によく言ったものです。さて、この連休は愛知の実家に帰っていました。というのも、祖父の法事があったからです。

私の実家はまだまだ昔の風習がしっかりと残る田舎にあります。地名も愛知県◯◯郡△△町大字◯◯字△△と、龍馬伝にでも出てきそうな住所です。親族はほとんど地元に住んでいるため、地元以外の法事をよく知らないのですが、いろいろ聞き比べてみると、ずいぶん昔ながらの法事のようです。

法事には基本的に親族が集まるのですが、実家の部落にはまだ5人組制度の名残が残っており、ご近所の方も必ず法事の沙汰を出すことになっています。今はなくなりましたが、昔はご近所の方が料理や会場の設営のお手伝いをしてくれました。

会場と言っても、自宅です。東京などは、法事用の会場やお店などで行うことが多いようですが、実家では部落で共同購入した長い机や大鍋などがあり、部屋さえあればどこの家出もできるようになっています。さすがに最近は、仕出しを頼んで「がんもどき」や「ごぼうの煮付け」だけを実家で用意しているようです。

私は、昔からこの「がんもどき」や「お味噌汁」が大好きでした。大鍋で長時間コトコト煮込んであるため、味がよくしみ込んでとてもおいしいのです。

話を戻しましょう。開始の時間に近づくと、ご近所や親戚がゾロゾロと集まってきます。仏間や居間に何十枚とこのときのためだけに用意してある座布団が並べてあり、あっという間に足の踏み場もない程の人で埋まります。

そこへ、御院さん(お坊さん)の登場です。昔は、二人だったのですが、今は景気を反映してかお一人でいらっしゃいます。最初の読経は40分くらい続きます。私もがんばってお経を聞くのですが、20分もしてくると足がしびれてそれどころではなくなります。何度か足を崩しながら様々な物思いに耽っていると、休憩となります。

私の役目は、御院さんにお茶を出すことなのですが、しびれが切れてしばらく歩けません。柱に寄りかかりながらなんとかお茶をお出しします。お茶を出すだけではなく、休憩時間の間は御院さんのおしゃべりのお相手です。なかなかの大役です。

休憩が終わると、また読経が始まりますが、20分もすると、「それでは皆さんご一緒に」のかけ声とともに、会場全員で読経が始まります。

出身の違う家内は、最初に出たときにはかなり驚いたようです。私の子供の頃は、夏休みに1週間程毎晩お寺に出向き、お経を暗唱するという「おつとめ」とよばれるものがありました。そのおかげか、部分的ではありますが今でもお経を暗唱しています。

お経が終わると、御院さんの説法を聞きます。いわゆる道徳の授業のようなお話を聞きます。それが、終わるとお勤めは終わりです。

敷き詰められた座布団が撤去され、長い机が用意されてみんなでお昼ご飯を頂きます。家のものは、ビールを注いだり、ご飯を配ったりと大忙しです。私は、子供の頃遊んだ幼なじみのお父さんやお母さんにお酌をしながら昔話に花を咲かせます。

そろそろお開きの時間になると、お砂糖やらまんじゅうやらの大きな手みやげをお配りして持って帰ってもらいます。そして、一通り片付けが終わると、家族と親族だけで「ご苦労様会」をして無事終わりという次第です。

私はこれまで何度か法事に出てきました。最初は、ちょっとめんどくさいとか、簡単に住ませてしまえばいいのにという思いがありました。しかし、最近は大切に守って行かなきゃならない行事だなというように思うようになってきました。

歳を取ったからでしょうか、古き良き日を思い出させてくれる行事は、これからも代々伝えて行けなければならないものだと強く思い、東京に帰ってきました。

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平野 恭吉平野 恭吉

平野 恭吉

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