昨今、喫煙者の方々はだいぶ肩身の狭い思いをされているようですが、残念ながらインプラントの治療でも喫煙は悪影響を及ぼします。
まずは、上のレントゲン写真をご覧ください。根の先端に歯よりも大きな嚢胞(のうほう膿の塊)があります。これまで度々腫れていたそうですが、ずっと放置されていたそうです。残念ながら残すことは出来ません。
さて、喫煙者の問題点は何かと申しますと、「治癒が遅れる」ということです。
この症例では、喫煙者でなくてもこれほど大きな嚢胞があれば、歯を抜いた後にゴッソロ骨が無くなってしまいます。
まず、最初に適用したのは抜歯時にPRGF(成長因子)を入れることです。これにより粘膜の回復が通常より早く起こります。1ヶ月後粘膜が回復したところで、人工骨とPRGFを入れて骨の再生を促しました。通常なら問題なく成功するはずでしたが、なんといってもヘビースモーカーでしたから、手術したところの粘膜がうまく治らずに傷口が開いてしまいます。
それでも定期的なケアを行っていると粘膜が次第に閉じて骨が再生されてきました。
左側のレントゲンではぶつぶつしたものが確認できますが、これが人工骨です。右側の写真では自分の骨が再生して人工骨が目立たなくなっています。
CTを取って骨の状態を確認してみると、とてもいい状態になっていました。しかし問題はインプラントをする際に歯茎をたくさん切ってしまうとインプラント周囲の歯茎が無くなってしまうことが懸念されました。
しかも、この患者さんとても嘔吐反射がつよく、治療を開始した直後はデンタルミラーを口の中に入れただけでもむせてしまう有様で、インプラントの手術がはたしてできるのだろうかという機具もありました。
そこで、今回は歯肉を切開しない(フラップレス)手術を選択しました。これは、インプラントを入れる部位に直径4mmの小さな穴をあけてそこにインプラント入れるという方法です。しかし、骨の状態を目で見ることが出来ないため、インプラントを入れる位置や方向を間違うと、しっかり骨に入っていないということになりかねません。
そのため、今回ガイデットサージェリーも適用することにしました。
これがその装置です。CT画像からコンピューターでインプラントを入れる位置を設計し、光造形という技術を用いてご覧のようなガイドを作ります。この金属の筒に沿ってインプラントを入れれば、シミュレーション通りになるという優れものです。
これで、「安全」「確実」「低侵襲」の手術が可能となります。
術後の出血はほとんどありません。ご覧のように少し血がにじむ程度です。この方法だと、歯を抜く時より痛くありません。この部分で硬いものを咬まなければご飯もすぐ食べられます。
設計通りの位置にインプラントを入れることができました。
これなら、術後感染のリスクはほとんどありません。それでも、術前時術後に禁煙して頂くようお願いしています。(かなり難しいようですが・・・)