前回、お口の中にはたくさんの細菌がいることを説明しました。ここで疑問がわいてきます。直腸にも同じだけの細菌がいるのに、どうしてお口の中の細菌が問題になるのでしょう?
それは、歯と歯ぐきの境目のポケットから細菌が血流内に浸入してしまうからなのです。特に、歯周病などの炎症があるとそこから入り込みます。ケガをしたろころからばい菌が入りやすいのと同じです。
しかし、少し医学をかじった人ならお気づきのことかと思いますが、血中に入ったのであれば、免疫細胞が細菌をやっつけてくれるのでは?という疑問がわいてきます。
その答えは、通常血管内に入った細菌は、確かに白血球によって死滅させられます。しかし、歯周病菌は血小板を自分の周りに集めて「防壁」をつくって、白血球に察知されずに全身に運ばれてしまうのです。そう、敵地に侵入したら、敵を倒して制服を奪い、敵に紛れ込んでしまうという、アクション映画さながらの賢い作戦を使うのです。
かくして、お口の中の細菌は、警備の手薄な歯周ポケットから、敵の制服を身にまとい、白血球に見つからないように人の臓器の奥深くに浸入してしまうのです。