今日はインプラントのケースです。上顎の奥歯の骨がなくてインプラントが入れられないといわれた方は是非ご一読ください。
上顎の奥歯の上には上顎洞と呼ばれる空洞があります。この空洞は人によって大きさがまちまちですが、空洞が大きい場合、上顎洞底が歯の根まで達します。歯を抜くとさらに低なり、場合によっては口と上顎洞の間の骨の厚みが1mmしかないなんてケースもたくさんあります。
インプラントを入れるためには最低6mmの骨の厚みが必要で、出来れば10mm以上が理想です。このような骨の厚みがないケースはまれのように思われるかもしれませんが、日本人の約半数がこのタイプだといわれています。
まずは、CTによるシミュレーションです。10mmのインプラントを入れた場合ご覧のように半分近く上顎洞へ突き抜けてしまいます。場所によっては骨の厚み3mmしかありません。
前から見た断面図です。写真の右側が頬、左側が上あご、上部中央の黒い空洞が上顎洞です。
3Dで患者さんの左斜め上から除いた画像です。上顎洞に突き抜けているのが分りますね?(わかりにくいとは思いますが・・・)
こうしたケースは「上顎洞挙上術」を行います。
ここから先は、血を見るのが苦手な方は進まないでください!!!
まず、切開して骨を露出させます。
CTであらかじめどの位置に上顎洞があるか分っていますので横から四角い窓を開けて上顎洞の粘膜を破らないように骨から剥離します。(上顎洞の粘膜は非常に薄く、ちょうどゆで卵に付いている膜をはがすような感じです。)さらにインプラント入れる穴をあけます。
上顎洞の粘膜と骨との間に人工骨を入れてスペースを確保し、インプラントを埋入します。四角い窓の中に見えるのが人工骨です。
窓開けは超音波を使いますので、外した窓はご覧のように奇麗にもとに戻せます。超音波は骨を簡単に削りますが、柔らかい粘膜などは傷が付きにくいのが特徴です。
最後に成長因子を入れて、骨の再生を促します。
ブルーのラインが最初の上顎洞の底、黄色のラインが挙上した後の上顎洞の底です。間には人工骨が入っていますので、少しずつ自分の骨に置き換わります。
このブログもおそらく手術を受けた患者さんもご覧になっていると思いますが、「術後の経過はいかがですか?」。皆さんには後日ご報告致します。
上顎洞挙上術はインプラント治療の中でも非常に難易度の高い手術です。どこの医院でも行っている訳ではありません。もし、上顎の奥歯の骨が薄くてインプラントを入れられないと断られた方は是非一度ご相談ください。