最近、たくさんの患者さんからインプラントについてTVで報道していたとのお話を聞きました。なんでも、NHKのクローズアップ現代で取り上げられていたようです。内容は、「最近インプラントのトラブルが増えている。歯科医院の経営も厳しく、利益のために安易にインプラントを始める歯医者もいる。ただ、インプラントは適正に処置されればとてもいいものである。」だったそうです。
実際の番組を見ていないので番組に関するコメントは出来ませんが、上記の内容はある意味真実だと思います。
インプラントはここ数年、かなり一般的な治療法として普及してきました。それに伴い、トラブルも増えているのは事実です。中には、利益目的で安易にインプラントを始める歯医者もいるでしょう。知識も技術もないまま始めれば、トラブルを起こす事は目に見えています。
患者さんの立場からすれば、そうした歯医者の技術を見極めるのは容易ではなく、インプラントにたいして疑心暗鬼になってしまうのも当然のことと思います。ですから、それらを見ぬく目を養うのにはいい番組でだったはずです。
それでも、番組のなかで適正な治療がなされればインプラントはとてもいいものだというコメントがあった事は評価できると思います。実際インプラントの5年生存率は下顎では98%前後、上顎では95%前後と非常に高い値が出ています。私がインプラントを入れた患者さんに感想を聞いても、どれも非常に高い評価を頂いています。
しかし、上手くいかなかったケースも幾つかあります。そして、患者さんが最も気にしているのは、その上手くいかなかったケースが自分だったらということなのです。
98%の成功率で、残りの2%の失敗に当たってしまった場合、皆さんはそれを納得できますか?おそらく、気持ちでは誰もが納得できないのではないでしょうか。でも、手術というものは100%ではないことを理屈で納得して、不安で逃げ出したい気持ちを抑えているのではないかと思います。
この、「理屈で納得する」ことが、インプラントをする前には必ず必要なのです。インプラントのメリットやデメリットについての十分な説明を受け、疑問点をぶつけて理屈の不安を取り除く。インプラント治療を受けた方は、その理屈を盾に手術前の不安と戦い、治療に挑まれています。
患者さんはインプラントを入れて欲しいのではなく、おいしく食事が出来るようになりたいと願って歯科医院のドアをたたきます。インプラントはブリッジや入れ歯と並ぶ、あくまでも治療の一つの手段です。
それでも、成功すればインプラント治療はとてもいいものだと、なんとなく患者さんが思われているから、インプラントに関心が集まっているのです。ただ、インプラントを成功させるには、噛み合わせ、歯周病、外科、補綴など様々な知識と技術が必要になります。それらを担当する歯科医師が持ち合わせているかどうかを患者さんが見極める事はおそらく容易な事ではないと思います。
私は、患者さんのこうした不安を出来るだけ取り除いてあげることが、最も大切ではないかと考えています。当院の取り組みとしては、診査診断、リスク説明はもちろんのこと、より安全な手術ができるよう心がけています。
これはその一つで、CTによる3次元治療計画に基づき、治療計画どおりの結果を出すために、コンピュータで作ったドリルガイドを用いた手術のご紹介です。
3D設計に基づいたガイドを作成します。
ガイドをお口の中に入れたところ。
治療計画どおりに、インプラントを入れることができました。
インプラント治療が怖くない方など一人もいらっしゃいません。皆さん不安と戦って、インプラントを入れていらっしゃいます。どう納得するか。そこが一番大切なところではないでしょうか?